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酒さ〜当院での治療も含めて〜


酒(しゅ)さとは、慢性で再発を繰り返す顔面の皮膚の炎症です。症状は、①赤みを帯びた状態である紅斑と毛細血管の拡張が主であり、場合によっては②ぶつぶつ(丘疹)やウミ(膿疱)ができます。酒さを増悪させないようなスキンケアや生活習慣の改善以外に、根治する確立した治療法はなく、症状のコントロールを目標とした治療が色々と試されています。以下、スキンケアと生活習慣の改善点について、そして治療についてまとめます。

 

<スキンケアと生活習慣の改善>

・高温、日光、辛い食事、アルコール、運動、ストレスを避ける

・保湿、洗顔はお湯は使わずに優しく洗う、硬いスポンジやタオルを避ける、刺激性のある化粧品は使用しない(特にアルコール含有のもの)、SPF30以上の日焼け止めを塗る、日焼けを避ける服装をする(例:帽子、日傘)

 

<治療>

①の場合

・レーザー、Intense Pulse Light(IPL: フラッシュランプ光源)による治療が有効。波長が約500nm以上なら効果が期待できます。治療は継続的に行う必要があります。

・α2アドレナリン受容体刺激薬のBrimonidineが入った外用薬(日本未承認、海外商品名Mirvaso)

 

②の場合

通常のにきびと同じような治療が一般的です。テトラサイクリン系と呼ばれる抗生物質の内服と、メトロニダゾールと呼ばれる抗生物質の外用薬で治療します(外用薬は保険外適用のため自費:当院処方可能)。アゼライン酸の外用薬も効果が認められています。

 

当院では、上記スキンケアや生活習慣の指導以外に漢方薬の内服による治療も試みています。ご希望の方は一度ご相談ください。漢方の処方は、証と呼ばれる体質を考慮して処方が決定されますが、古くから酒さに用いられる薬はある程度限定的です。

 

一部皮膚科で行われているタクロリムス(商品名プロトピック)での治療については、効果があったという報告はあるようですが、この免疫抑制剤の本来の保険適応はアトピー性皮膚炎であり、副作用として酒さのような皮膚症状を起こしうること、リンパ腫のリスクを上げること、催奇形性や胎児毒性が認められている点などを理解したうえで、自費診療でなら試すことは構わないと考えています。

 

以上から現在の日本で、赤みだけでお困りの方には、副作用と効果のバランスを比べてみるとまず検討すべき治療法は、レーザーまたはIPL治療のみです。レーザーは色素レーザー照射(Vビームレーザーを使用します)という治療で、酒さは毛細血管拡張症ですので、医療保険が利用可能です。残念ながら当院では実施できませんが、これまでの治療で満足できない方はレーザー治療をしている皮膚科で試みても良いと思われます。レーザー治療以外では漢方治療が保険適応になりますが、満足な効果が得られないかもしれません。その場合には、自費診療になりますが、メトロニダゾール外用薬やアゼライン酸外用薬を試す価値はあると思われます。