2018年11月3日から11月4日にかけて、中部国際空港で開催されたワクチン&渡航医学セミナーに参加してきました。色々と勉強になりましたが、特に以下の点は重要だと感じました。
- ワクチンの保存は専用の冷蔵庫で管理する:温度変化が激しいと失活してしまい、ワクチンの効果がなくなる。
- ワクチンの定期接種での健康被害は市町村が窓口の予防接種健康被害救済制度、任意接種では医薬品医療機器総合機構が窓口の医薬品副作用救済制度(PMDA)が利用できる。給付の請求は本人または家族が行う。
- 日本脳炎以外の不活化ワクチンは、基本的に深めの皮下注射が腫れにくい。
- 百日咳の予防には、大人は10年毎に百日咳ワクチン接種が望ましい(商品名トリビック)。
- ロタウィルスは小児の急性脳症/脳炎の原因の第3位(ちなみに1位はインフルエンザウィルスです)
- 山梨県は豚の日本脳炎に対する抗体保有率が80%以上と高い(=日本脳炎が流行している地域)
- B型肝炎ウィルス感染者の涙や汗にもウィルスは存在している(ただし、感染するかどうかは不明)
- 日本には定期接種から外れた人のワクチン接種をキャッチアップする仕組みがない(任意接種扱いになり、スケジュールも明確に国などが規定していない)
- 抗体価は必ずしも免疫能を反映していない(=例えば、風疹のIgG抗体価の大小で免疫能を完全に評価できないということ。抗体価測定は、実際の運用面では大学や医療機関で採用されています。)。
- 渡航前のリスク情報は、日本語ならFORCE、英語ならCDC Travelが参考になる(CDCの方が詳しいです。万全の準備をするには、日本で流通していない輸入ワクチンを打つ必要が出てきます。)。
- 海外旅行では、もしもの時の日本への移送費もカバーしてくれる旅行保険に加入しておいた方がよい。クレジットカードの保険では、移送費のカバーが弱い。
当院では専用の冷蔵庫を用いて温度管理を徹底することで、ワクチンの失活を防いでいます。不活化ワクチンで、皮下の腫れを起こす原因と言われているアジュバントと呼ばれる免疫賦活剤の成分の影響を減らすために、極力皮下の深いところに注射します。また、定期接種など種類が多いワクチンの接種には、同時接種を採用しています。何らかの事情で定期接種ができなかった人にも、費用面では任意接種にはなってしまいますが、キャッチアップできるように計画します。海外渡航時のワクチン接種なども今後積極的にしていきたいと考えています。現在、輸入ワクチンの取り扱いについて検討中です。